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2026.2.25 セキュリティ対策

不正アクセス禁止法の事例でわかる|どこから違法?企業が知るべきリスクと対策

不正アクセス禁止法の事例でわかる|どこから違法?企業が知るべきリスクと対策 「この操作は本当に大丈夫なの?」
不正アクセスの境界線は、現場の実務と紙一重のところにあります。
本記事では、不正アクセス禁止法の考え方を事例でひも解きながら、企業が見落としやすいリスクと、備えるべき対策を整理します。

不正アクセス禁止法とは何か

不正アクセス禁止法は、インターネットや企業のシステムなどに対して、権限のない人が不正にアクセスすることを防ぐための法律です。
禁止の対象は、実際に侵入する行為だけでなく、IDやパスワードなどの認証情報を不正に取得・利用する行為や、不正アクセスを助長する行為などにも及びます。

企業の立場から見ると、この法律は「誰が処罰されるか」という話にとどまらず、自社のシステムやアカウントが不正に利用された場合に、どのような行為が問題になるのかを判断する際の基準にもなります。

制定された背景と目的

不正アクセス禁止法の正式名称は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」です。1999年に制定され、その後も情報通信環境の変化に合わせて複数回の改正が行われています。

この法律は、不正アクセス行為を禁止し、その罰則や再発防止のための措置を定めることで、インターネットなどの通信ネットワークを通じて行われるコンピュータ犯罪を防止し、アクセス制御機能によって守られているシステムの秩序を維持することを目的としています。

言い換えると、単に違反者を処罰するための法律ではなく、企業や個人が情報システムを安心して利用できる環境を守り、社会全体のIT利用の基盤を支えるための法律として位置づけられています。

不正アクセスの法的な意味と判断基準

不正アクセス禁止法における「不正アクセス行為」とは、アクセス制御機能によって守られているコンピュータやサービスに対して、正当な権限がないにもかかわらず利用できる状態にする行為を指します。

重要なのは、「技術的に入れてしまったかどうか」ではなく、「正当な権限があるかどうか」が判断の基準になるという点です。
たとえば、他人のIDやパスワードを使ってログインする行為や、ソフトウェアの脆弱性を突いて侵入する行為は、いずれも不正アクセスに該当します。

主な禁止行為

不正アクセス禁止法が規制しているのは、実際にシステムへ侵入する行為だけではありません。
法律では不正アクセス行為そのものに加えて、その準備や手助けにあたる行為についても、幅広く禁止対象としています。

  • アクセス制御機能を回避して侵入する行為(脆弱性の悪用など)
  • 他人のID・パスワードでログインする行為(なりすまし)
  • 不正アクセス目的で認証情報を不正に取得する行為
  • 不正に入手した認証情報を保管する行為(不正アクセスに使うと知りながら)
  • フィッシング等によりID・パスワードの入力を不正に要求する行為
  • 認証情報の提供などにより不正アクセスを助長する行為

このように、不正アクセス禁止法は、「実際に侵入する行為」だけでなく、「侵入の準備」や「手助け」にあたる行為まで含めて規制している点が大きな特徴です。

罰則の全体像

不正アクセス禁止法では、実際にシステムへ侵入する不正アクセス行為そのものについて、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」という罰則が定められており、決して軽い扱いではありません。

そのうえで、この法律は、侵入行為そのものだけでなく、周辺行為についても罰則を設けています。
たとえば、IDやパスワードなどの認証情報に関わる「不正取得」「不正保管」「不正入力要求」といった周辺行為については、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」といった罰則が規定されています。

ここで重要なのは、実際にシステムへ侵入した場合だけが処罰対象になるわけではない、という点です。
法律上は、不正アクセスに至る前段階の行為や、その手助けにあたる行為についても、状況によっては処罰の対象になります。

企業の皆さまの立場から見ると、「侵入されたかどうか」だけでなく、「社内の運用や行為が、法律上どのラインから問題になり得るのか」を理解しておくことが、リスク管理の観点では重要になります。

不正アクセス禁止法は、「侵入したかどうか」だけでなく、「侵入につながる行為」まで含めて幅広く規制し、抑止するための法律だと考えると分かりやすいでしょう。

実際に起きている不正アクセスの事例

不正アクセスは、特定のパターンだけで起きるものではなく、認証情報の漏えい、脆弱性の悪用、想定外の経路からの侵入など、さまざまな形で発生しています。
ここでは、実際に公表されている事例をもとに、不正アクセスがどのように起き、企業にどんな影響を及ぼすのかを整理します。

事例1:脆弱性を突いたメールシステムへの不正アクセス

2025年11月、A大学は教職員・学生向けメールシステムに対して、外部からの不正アクセスが行われた可能性があることを公表しました。
大学の発表によれば、スパムメール隔離サーバーに対する不審な通信が確認され、その後の調査により、当該システムが利用していたソフトウェアの未知の脆弱性を突いた攻撃を受けた可能性が高いとされています。

この不正アクセスにより、参照していたディレクトリサーバーから、メールアドレスやログイン用パスワードなどの情報を含むデータが外部に漏えいした可能性があると発表されています。
大学は全アカウントのパスワードを強制的にリセットするなどの対応を行い、現時点では、漏えいした情報を利用した二次被害は確認されていないとしています。また、関係機関や警察への報告も行われています。

この事例は、不正アクセス禁止法の観点では、アクセス制御機能を回避してシステムに侵入する行為に該当し得る、いわゆる「脆弱性悪用型」の不正アクセスにあたります。
IDやパスワードを盗まれなくても、システムの弱点を突かれるだけで侵入される可能性がある、という点が特徴です。
企業や組織にとっては、脆弱性対応やパッチ適用、システム監視の重要性を改めて示す事例といえるでしょう。

事例2:流出リストを悪用する「パスワードリスト攻撃」

2025年、大手ECサイトにおいて、第三者による不正ログイン被害が発生したことが公表されました。
このケースでは、特定のシステムがハッキングされたわけではなく、攻撃者が他所で不正に入手したIDとパスワードのリストを用い、正規のログイン画面から機械的に試行を繰り返す「パスワードリスト攻撃」が行われたとみられています。

この不正アクセスにより、顧客のアカウント情報が第三者に閲覧された可能性があると発表されました。
企業側は、被害が確認されたアカウントのパスワードを強制的にリセットし、利用者へ注意喚起を行うとともに、追加のセキュリティ対策を講じる対応に追われました。

不正アクセス禁止法の観点では、他人のID・パスワードを使ってログインする行為は、たとえパスワードが合致していたとしても、正当な権限がなければ「なりすまし型」の不正アクセスに該当します。
「パスワードさえ合っていれば安全」という考え方が通用しない、現代のサイバーリスクを象徴する事例といえるでしょう。

事例3:外部コード混入による開発環境の侵害

2026年1月、大手地域掲示板の運営会社は、自社の社内開発環境に対して、第三者による不正アクセスが行われていたことを公表しました。
同社の発表によれば、原因は開発プロセスで利用していた外部プログラムに不正なコードが混入(マルウェア感染)していたことにありました。
これにより、本来は本番環境から分離されているはずの開発環境内のデータが、外部からアクセス可能な状態となり、実際に第三者による不正アクセスが確認されています。
影響範囲としては、特定フラグ情報や、従業員の氏名・メールアドレスなどが流出の対象となりました。

不正アクセス禁止法の観点では、このようにプログラムやシステムの隙を突いてアクセス制御を回避し、内部環境へ侵入する行為は、「セキュリティホール攻撃型」の不正アクセスに該当し得ます。

この事例は、自社システムそのものの欠陥だけでなく、利用している外部プログラム(サプライチェーン)の安全性が侵入口になり得ることを示しています。
企業にとっては、外部ソフトウェアの管理や、万一の侵入を前提とした権限管理・環境分離の重要性を改めて認識させる事案といえるでしょう。


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不正アクセス被害の広がり方とは?

不正アクセスというと、「乗っ取られた」「侵入された」といった結果だけが語られがちですが、実際の被害は単発の出来事で終わることは多くありません。多くのケースでは、「入口(侵入のきっかけ)」→「権限の悪用」→「内部操作」→「被害の拡大」という段階を踏みながら、徐々に深刻化していきます。
どこが最初に突破され、どこまで操作されたかによって、被害の範囲や深さは大きく変わります。ここでは、企業で実際に起きやすい不正アクセスの進み方を、段階ごとに整理して見ていきます。

① アカウントの乗っ取り

「なぜ業務システムが乗っ取られたり、侵入されてしまうのか?」と感じるかもしれません。
企業の不正アクセス被害で最も多い出発点は、社員や担当者が業務で使っているアカウント(メール、業務システム、クラウドサービスなど)のID・パスワードの漏えいです。

これらの認証情報が何らかの形で攻撃者の手に渡ると、攻撃者は正規ユーザーになりすましてログインできる状態になります。これが、いわゆる「アカウントの乗っ取り」の正体です。

では、こうした認証情報は、どのような経路で攻撃者の手に渡るのでしょうか。
実際の被害を見るとその入口には、次のような典型的なパターンがあります。

  • フィッシングやマルウェアなどによる認証情報(ID・パスワード)の漏えい
  • 使い回しパスワードや管理不備によるアカウントの悪用
  • ソフトウェアの脆弱性や設定ミスの放置による不正侵入
  • PCの盗難や紛失による認証情報の流出

こうした「入口」を突かれると、最初は単なるログイン被害に見えても、そこから権限を奪われ、内部システムにアクセスされ、最終的には設定変更や情報持ち出しへと、被害が段階的に広がっていくことが少なくありません。

つまり不正アクセスは、単一の行為で完結するというより、 「侵入のきっかけ」→「権限の悪用」→「内部操作」→「被害の拡大」というプロセスとして進むケースが多い、というのが実態です。

② 権限の悪用・なりすまし

アカウントの認証情報が漏えいし、いわゆる「乗っ取り」が起きると、次に発生しやすいのが正規ユーザーになりすましてログインされる状態です。
攻撃者はIDやパスワードを使って、社員アカウントや業務アカウント、メールアカウント、企業のSNSアカウントなどに不正にアクセスします。

この段階の特徴は、システムの脆弱性が直接突かれているわけではなく、あくまで「正規の入口」から入られている点にあります。
そのため、操作の見た目は「普通のログイン」と変わらず、不正に気づくのが遅れるケースも少なくありません。

比較的わかりやすい例が、企業のSNSアカウントのなりすましです。
公式アカウントから不正な投稿が行われたり、詐欺サイトへの誘導リンクが掲載されたりすると、顧客やフォロワーに直接影響が及びます。短時間であっても、ブランドイメージの毀損や信用低下、広報・法務対応の負担につながることがあります。

一方、メールアカウントや業務アカウントが乗っ取られた場合は、影響はより業務の中枢に及びます。
過去のメールのやり取りから取引関係や業務内容を把握されたうえで、取引先になりすました「なりすましメール」や請求書詐欺のメールが送信されるといった被害も現実に起きています。
この段階では、まだ「ログインされて悪用された」という状態ですが、ここからさらに被害が深刻化していくケースも少なくありません。

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③ システム内部への侵入

②の段階で「正規ユーザーとしてログインできる状態」が作られると、次に問題になるのが、そのアカウントが持つ権限を使って、システム内部の操作まで行われてしまうケースです。
特に、管理者権限や特権アカウントが悪用された場合、被害の性質は一気に変わります。

たとえば、設定の変更、他ユーザー情報の閲覧、アカウントの追加作成などが可能になり、単なる「なりすましログイン」では済まなくなります。
この段階になると、外部からの攻撃であっても、見た目は内部の正規作業と区別がつきにくい操作として進むため、気づいたときには影響範囲が大きく広がっていることも珍しくありません。

さらに、管理者IDや特権アカウントが使われると、ログの改ざんやバックドアの設置といった行為も可能になり、復旧や調査にかかるコストは一気に跳ね上がります。
こうした「なりすましログイン」を起点に、どのように被害が拡大していくのかについては、別途下記のホワイトペーパーで詳しく解説しています。

関連資料のご紹介
ランサムウェア攻撃 事故対応タイムライン事例集
なりすましログインや内部侵入からランサムウェア被害が発生した場合、被害はどのように拡大していくのか。実際の事故対応を想定したタイムライン形式で、初動対応・復旧・影響範囲の広がり方を具体的に解説した資料です。
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④ 脆弱性・設定不備を突いた侵入

③では「正規アカウントとしてログインされる」ケースを見てきましたが、それとは別に、ログイン自体を経ずに侵入されるパターンもあります。

これは、Webアプリケーション、メールサーバー、業務システム、OSやミドルウェアなどのソフトウェアの脆弱性や設定不備を突かれ、アクセス制御そのものを回避されてしまうケースです。

この場合、IDやパスワードは使われず、本来入れないはずの領域に直接アクセスされることになります。
「認証を突破された」というよりも、「そもそも壁を壊されて中に入られた」というイメージに近い侵入です。

SQLインジェクションやディレクトリトラバーサル、XSSなどの攻撃は、まさにこのタイプの侵入経路に分類されます。

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⑤ 侵入後の不正操作

侵入が成立したあと、被害はそこで終わるとは限りません。
攻撃者は、システムの設定を書き換えたり、後から再侵入できる仕組み(バックドア)を仕込んだり、社内データや個人情報を外部に持ち出したりといった不正行為を行います。
このように、侵入後も攻撃を継続できる状態を作ることは、「永続化」と呼ばれる典型的な手口です。

たとえばランサムウェアの場合でも、
・管理者権限を奪ってセキュリティ機能を無効化する
・再起動しても動き続けるプログラムを仕込む
・追加のバックドアを設置して、後から再侵入できるようにする
といった形で、被害を拡大・固定化させるための操作が行われることが少なくありません。

この段階になると「不正に入られた」という問題だけでなく、
「業務の信頼性が損なわれた」
「情報漏えいへの対応が必要になった」
「復旧や調査に多大なコストがかかる」
といった形で、経営リスクに直結する問題へと発展していきます。

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⑥ 悪意がなくても違反になるケース

不正アクセスというと、「外部の攻撃者が悪意を持って侵入する行為」をイメージしがちですが、実務の現場では、本人に悪意がなくても、結果として不正アクセス禁止法に抵触する可能性がある行為が起きてしまうケースも少なくありません。
たとえば、次のような行為は、現場では「よかれと思って」「業務を止めないために」行われがちですが、法律の観点ではリスクが高い行為にあたります。

1. 他人のIDを借りて業務を代行・フォローする

「休暇中の担当者の代わりに承認ボタンを押す」「急ぎの資料を出すために同僚のパスワードを聞いてログインする」といったケースです。
業務効率のための行為であっても、本人の正当な権限がない状態でログインして操作すれば、「不正なアクセス」と評価される可能性があります。

また、パスワードを教え合う運用が常態化していると、万一外部から侵入された場合でも、ログ上「正規の操作」なのか「攻撃」なのかの区別がつかず、調査や説明が困難になるリスクも高まります。

2. 退職者が「善意の引き継ぎ」で旧アカウントを使う

「後任が困っているから」「マニュアルが古いサーバーにしかないから」といった理由で、退職後に自宅から以前のIDでログインして作業を手伝うケースも、現場では起こりがちです。
しかし、退職した時点で、その人のアクセス権限は法的には消滅していると整理されます。
会社側がアカウントを消し忘れていたとしても、アクセスした側は不正アクセス禁止法違反に問われる可能性があります。

3. セキュリティチェックのつもりで他人のパスワードを試す

管理者が「弱いパスワードを使っていないか確認するため」に、推測できそうなパスワード(例:123456 や誕生日など)で実際にログインを試すケースです。

たとえ管理者であっても、本人の識別符号(ID・パスワード)を使ってログインする正当な権限が常にあるとは限りません。 本来は、「実際にログインを試す」のではなく、システム側でパスワードポリシーを強化するなどの方法で管理すべき領域です。

4. 便宜上、共有アカウントを使い回す

委託先や複数の外注スタッフが、1つの「共有ID」を使って作業するケースもよく見られます。
この状態では、「誰が・いつ・何をしたのか」が特定できず、法律が前提としている「アクセス制御」が事実上無効化されていると評価されやすくなります。

また、万一そのIDを使った不正行為が起きた場合、責任の所在が不明確になり、調査や説明が極めて困難になります。

社内のフォローでもリスクは消えない

これらに共通するのは、「悪意があるかどうか」と「不正アクセスにあたるかどうか」は、必ずしも一致しないという点です。
法律は、「誰が・どの権限で・どこまでアクセスしてよいか」というルールを前提に作られており、その枠を外れたアクセスは、動機にかかわらず問題になる可能性があります。

「業務のため」「手助けのつもり」という行為こそ、ルールとして許される範囲と、やってはいけない範囲を明確にしておくことが、企業にとっての現実的なリスク管理につながります。

まとめ:不正アクセス法に抵触するのは?

不正アクセス禁止法において、どこからが不正アクセスに抵触するかを解説した上記の章を以下表にまとめています。
段階・ケース 内容の概要 関係しやすい法律の例
① アカウントの乗っ取り 認証情報(ID・パスワードなど)が盗まれ、正規ユーザーになりすましてログインされる状態。 不正アクセス禁止法(不正アクセス行為)
② 権限の悪用・なりすまし 乗っ取られたアカウントの権限を使い、業務システムやメール、SNSなどを不正に操作する行為。 不正アクセス禁止法に加え、状況により業務妨害罪・詐欺罪など
③ システム内部での不正操作 管理者権限などを悪用し、設定変更、他ユーザー情報の閲覧、アカウント追加などを行う段階。 不正アクセス禁止法+業務妨害罪、不正競争防止法などに発展する可能性
④ 脆弱性・設定不備を突いた侵入 ソフトウェアや設定の弱点を突き、ログインを経ずに本来入れない領域へ侵入するケース。 不正アクセス禁止法(アクセス制御の回避)
⑤ 侵入後の不正操作(永続化など) バックドアの設置、ログ改ざん、データ持ち出しなど、侵入後に被害を固定・拡大させる行為。 不正アクセス禁止法に加え、個人情報保護法、不正競争防止法(営業秘密侵害)など
⑥ 悪意がなくても違反になるケース 他人のIDを借りてログイン、退職者が善意で旧IDを使用、共有アカウントの使い回し等。 不正アクセス禁止法(正当な権限のないアクセス)に該当する可能性
ポイントは、「どこからが不正アクセス禁止法の守備範囲か」と「その後は別の法律も絡んでくる」という整理です。
①や④の段階では、侵入した時点で不正アクセス禁止法上の「不正アクセス行為」が成立します。
一方、②・③・⑤で行われる情報の閲覧、改ざん、持ち出し、バックドア設置などは、不正アクセス禁止法に加えて、個人情報保護法や不正競争防止法(営業秘密侵害)、業務妨害罪など、別の法令違反として評価されることが多い領域です。
また⑥のように、悪意がなくても「正当な権限がないアクセス」にあたれば、不正アクセス禁止法違反と判断される可能性がある点も、実務上の重要な注意点になります。

企業が備えるべきポイント

ここまで見てきたように、認証情報の漏えい、権限の悪用、設定不備の放置といった日常の運用の隙を起点に、段階的に被害が拡大していくケースがほとんどです。
つまり、対策も「特別なセキュリティ製品を入れれば終わり」という話ではなく、日々のアカウント管理や運用の積み重ねが、被害の大きさを左右します。ここでは、多くの企業に共通して重要になるポイントを整理します。

ID・権限管理の徹底

誰が、どのシステムに、どこまで操作できるのかを整理し、業務に不要な権限は持たせないことが基本です。
特に、従業員の異動や退職、委託先の契約終了時に、アカウントや権限が放置されない運用が重要になります。
ここで問題になるのは、「便利だから」「一時的だから」といった理由で、ルールがあいまいになってしまうケースです。

望ましい運用(OK例)
・業務ごとに必要な権限だけを付与している
・退職者や異動者のアカウントは速やかに停止・削除している
・個人ごとにアカウントを発行し、使い回しをしていない
・管理者権限は必要な人にだけ、必要な期間だけ付与している

リスクが高い運用(NG例)
・退職者や異動者のIDがそのまま残っている
・権限の広いアカウントを複数人で共有している
・「一時的に借りるだけ」のアカウント利用が常態化している
・委託先がどこまで操作できるのか把握できていない

これらは一見すると「よくある運用」に見えますが、不正アクセスの被害が広がる典型的な温床になります。

すぐに事故が起きるとは限らなくても、ひとたび認証情報が漏えいしたり、アカウントが悪用されたりした場合に、被害が一気に拡大する原因になります。

多要素認証(MFA)の導入

IDとパスワードだけに依存した認証は、漏えいした瞬間に突破されます。
MFA(多要素認証)を導入することで、仮に認証情報が盗まれても、すぐに不正ログインされるリスクを大きく下げることができます。

【関連情報】多要素認証(MFA)とは?2FA・2ステップ認証との違いと導入の基本ガイド

ログの取得と監視

不正アクセスは「気づくのが遅れる」ほど被害が拡大します。
ログイン履歴や操作ログを記録し、普段と違う動きに気づける状態を作っておくことが、早期発見につながります。

具体的ななツール以前に、まず各システムが標準で持っている「ログ機能」をきちんと有効化し、保存・確認できる状態にすることが第一歩です。
そのうえで、システムが増えてきたら、ログをまとめて管理・監視できる仕組み(SIEMやログ管理ツール)を使うことで、「気づくのが遅れる」リスクを減らせます。

【関連情報】XDRとは?EDRやSIEMとの違いやメリット・導入手順を解説

脆弱性への対応

ソフトウェアや機器の脆弱性、設定ミスの放置は、「IDやパスワードを使わずに侵入される入口」になり得ます。更新や設定の見直しを継続的に行う体制が欠かせません。
これらはどれも地味な運用ですが、実際の不正アクセスの多くは、こうした基本が崩れているところから始まっています。

脆弱性対応は、アップデートの適用だけでなく、脆弱性診断ツールや専門会社の診断を使って定期的にチェックすることが現実的です。
実際の運用では、「パッチ適用+自動診断+定期的な第三者診断」の組み合わせで管理している企業が多く、どれか一つ欠けてもリスクが残ります。

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従業員教育・ルール整備

不正アクセス対策は、システムの設定やツールだけで完結するものではありません。
実際のインシデントの多くは、「うっかり」「いつものやり方」「良かれと思って」といった日常の行動をきっかけに発生しています。

そのため重要なのは、「何をしてはいけないのか」「どこまでが許されるのか」「困ったときはどうするのか」を、個人の判断に任せず、組織のルールとして明確にしておくことです。

あわせて、なぜそれが危険なのか、何が法的・業務的なリスクになるのかを、定期的な教育や研修の中で共有しておくことで、「知らずに違反してしまう」「悪意はないが危険な運用を続けてしまう」といった事態を減らすことができます。

不正アクセス対策は、「守る人」が理解していなければ機能しません。
技術的な対策とあわせて、人と運用のレベルで事故を防ぐ仕組みを整えることが、被害を未然に防ぎ、拡大を止めるための現実的な対策になります。

不正アクセス対策として、企業が備えるべき具体的なポイントは、下記の記事をお読みください。
不正アクセス対策とは?企業が取るべき対策の基本&実践ポイントを解説

まとめ

本記事では、不正アクセス禁止法の目的や禁止されている行為、実際に企業で起きやすい不正アクセスのパターン、そして被害の広がり方と備えのポイントについて解説してきました。
企業の不正アクセス被害は、「認証情報の漏えい」「権限の悪用」「設定不備の放置」といった日常の運用の隙を起点に、段階的に拡大していくケースがほとんどです。入口の時点で法的に「不正アクセス行為」に該当することも多く、その後の情報持ち出しや改ざん、業務停止対応などは、経営に直接影響するリスクへと発展します。

重要なのは、「対策をしていれば絶対に防げる」と考えることではなく、どこまで被害を食い止められるか、発生後にどう対応できるかという視点で備えることです。
アカウント管理や権限設計、脆弱性対応、ログ監視、従業員教育といった基本対策は、どの企業にとっても欠かせません。

一方で、どれだけ対策を講じていても、すべてのインシデントをゼロにすることは現実的ではありません。
調査・復旧対応、顧客対応、損害賠償、業務停止による損失など、万一のときに発生するコストや負担にどう備えるかも、経営判断として重要になります。

サイバー保険は、こうした「起きてしまった後」の実務対応や金銭的リスクをカバーするための選択肢の一つです。
技術的・運用的な対策とあわせて、経営リスク管理の一環としてサイバー保険の活用を検討することが、これからの企業には求められていると言えるでしょう。

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【出典】
総務省:不正アクセス行為の禁止等に関する法律
警察庁:不正アクセス対策
総務省:サイバーセキュリティ・不正アクセス関連
IPA:インターネットサービスへの不正ログインによる被害が増加中
IPA:不正ログイン対策特集ページ
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